雛の節句のあくる晩、春で、朧で、御縁日。同じ栄螺(さざえ)と蛤を放して、巡査の帳面に、名を並べて、女房と名告つて、一所に詣る西河岸の、お地蔵様が縁結び。これで出来なきや、日本は暗夜(やみ)だわ。泉鏡花『日本橋』(1953年)